行事の記録(過去開催分)


平成30年度(2018年度)

教学院研究会(東部)

 

講題・講師
「聖冏における法然の位置」
東海林 良昌 氏(教学院会員/佛教大学非常勤講師)
≪概要≫
 浄土宗第七祖・聖冏が浄土宗は寓宗であるという他宗からの批判に対し、五重伝法と天台円頓戒についての見解を示し、自宗における僧侶養成を可能にしたことは、宗史上画期となる業績であった。本報告では『浄土真宗付法伝』を中心に、聖冏における法然の位置を明らかにし、さらにそれ以外の著作を頼りとしながら、広大な聖冏思想の一端を明らかにしたい。

「浄土宗における口決相承をめぐって ―澄円と聖冏―」
吉水 岳彦 氏(教学院会員/大正大学非常勤講師)
≪概要≫
 本発表では、法然上人御往生以後の浄土宗における口決相承がどのように考えられてきたのかを概観した上で、旭蓮社澄円上人と七祖聖冏上人における口決相承についての見解を考察し、両者の相承説を比較検討した結果を紹介する。教外別伝・以心伝心等、直接の付法を重んじる禅宗隆盛の時代に立てられた両者の浄土宗相承説の特徴と相違を論じ、その上で聖冏上人の相承説が現代まで受け継がれることになった理由の一端を明らかにしたい。

 

教学院研究会(東部)

講題・講師
「大本山光明寺蔵『当麻曼陀羅縁起』流伝の経緯と背景」
大谷 慈通 氏(大本山光明寺記主禅師研究所研究員)
≪概要≫
 大本山光明寺が所蔵する『当麻曼陀羅縁起』は、奈良当麻寺の「当麻曼陀羅図」の由来を描いた絵巻であり、鎌倉時代の優品として国宝に指定されている。この絵巻は延宝三年(1675)大檀越磐城平藩主内藤義概が光明寺へ寄進したとされてきたが、制作年や制作者など、それ以前の流伝に関してほとんど詳細は伝わっていない。また近年光明寺が所蔵することになったこの絵巻の模本は、寛政五年(1793)老中松平定信が復古大和絵の祖と称される絵師田中訥言に精巧に模写することを命じ制作された絵巻であることがわかった。
 この2本の絵巻の流伝の経緯と背景を整理して光明寺の歴史を考察したい。
〈コメンテーター〉 野村 恒道 氏(東京教区芝組常照院住職)

 

教学院研究会(西部)

講題・講師
「 江戸時代の浄土学思想―懐音を通して―」
明石寛成 氏(佛教大学大学院博士課程)
≪概要≫
 江戸時代の僧である懐音と『浄土考原録』の関係について大島泰信『浄土宗史』では「『浄土考原録』を見た忍澂がその人となりに惹かれ、懐音を後継者にしようと同学の義山に謀った」ことが述べられている。つまり『浄土考原録』を契機として法然院の中興二世である忍澂の後継者として懐音は法然院中興第三世となった。しかし懐音及び著作の『浄土考原録』については先行研究が無く、もちろん史料批判もされていない。江戸時代の浄土学思想研究の一端として、今回は『浄土考原録』を分析していく。
「 近世初期における浄土宗と真宗の論争について」
星俊明 氏(大正大学大学院博士課程)
≪概要≫
 近世において浄土宗と真宗の間では多くの論争が繰り広げられてきた。しかしながら、個々の論争に関する研究、特に初期論争についての考察はきわめて少ない現状にあり、未だ明らかとは言えない。
 本発表では慶安期(1648~1652)の『聖徳太子日本国未来記』をめぐる論争、寛文期(1661~1673)の『親鸞邪義決』をめぐる論争を中心に取り上げ、初期論争の様相および近世論争発生の起因を考察したい。

 

教学院東西交流研究会

講題・講師
「信瑞著作の有する資料価値」
前島 信也 氏( 大正大学大学院博士課程 )
≪概要≫
 敬西房信瑞とは法然上人の上足である法蓮房信空・長楽寺隆寛を師に持つ鎌倉時代の学僧である。信瑞という名は非常にマイナーながらも、非常に特徴的な典籍を著している。
 本発表では信瑞著作の『浄土三部経音義集』『広疑瑞決集』を中心に、書誌学的視点、文献学的視点等から論じ、信瑞著作が多くの面から資料的価値を有することを提示する。
「廬山寺本『選択本願念仏集』を考える」
春本 龍彬 氏(大正大学大学院博士課程)
≪概要≫
 選択本願念仏集』には数多くの諸本が現存している。その中で法然上人の真筆を有する唯一の古鈔本が「廬山寺本」である。
「廬山寺本」はその本文に数多くの書き込みや訂正の痕跡が見られることから草稿本と認められている。『選択本願念仏集』撰述時における法然上人の思想を解明するためには「廬山寺本」の研究が必要不可欠な状況であると言っても過言ではない。
 今回の発表では近年の研究成果を中心に「廬山寺本」について述べてみたい。

 

教学院東西交流研究会

講題・講師
「法然と永明延寿 ―延寿の上品上生往生の伝承―」
伊藤 茂樹 氏(知恩院浄土宗学研究所 研究副主任)
≪概要≫
 法眼禅の三代目とされる中国の永明延寿(904~975)は、禅僧として著名であり、『宗鏡録』という書物を著し中国・日本に影響をあたえた。その一方で浄土信仰も深く、『万善同帰集』を著し、伝記には釈尊以来上品上生の往生を果たした二人目の祖師として格別に尊崇されている。院政期の南都では、僧俗を問わず多くの人に延寿の上品上生往生が伝承された。法然の「偏依善導」と異なる、日本中世に敷衍した延寿伝承を本発表では述べていきたい。
「法然『八種選択義』に見る『往生要集』の影響」
南 宏信 氏(知恩院浄土宗学研究所 研究助手)
≪概要≫
 本発表では法然『選択集』における「八種選択義」の成立過程から見る『往生要集』の影響を概観していく。まずこの着想の起点となった「選択我名」の成立過程を再確認した後、今回は特に「選択留教」を俎上にあげ、その成立の淵源に『往生要集』の影響があることを確認していきたい。「選択留教」の根拠となる『無量寿経』「特留此経止住百歳」の文は法然に先んじて『往生要集』に引用されており、極楽浄土と兜率天との議論を通じて法然により「選択留教」へと昇華していくのである。

 

教学院公開講座

講題・講師
テーマ:ペットは往生できるのか
 浄土宗教学院では、これまで研究成果の一端を広く公開・発表することを目的に、多くの地域にて、さまざまな形式で公開講座を開催して参りました。
 本年度は、関心の高まっているペット往生の問題について、近年の議論の盛り上がりのきっかけとなった両先生をお招きして、ディスカッションを交えながら検討をしてまいります。
ペットを家族の一員として捉える傾向の強い現代社会において、〈ペット往生〉〈ペット供養〉についてどのように考え、また今後、浄土宗教師としてどのように教化・実践をしていくのか。そのようなことを考える契機としてまいりたいと思います。
 どなたでもご参加いただけますので、この機会にぜひともご参加ご聴講ください。
〈講師〉
安達 俊英 先生(知恩院浄土宗学研究所嘱託研究員)
林田 康順 先生(教学院理事/大正大学教授)
〈司会・コーディネーター〉
石川 琢道 先生(教学院書記/大正大学准教授)